■展示室■

15cmの境界線

 

錬金術における、等価交換の原則。

僕らの世界全ては、それで成り立っていると言っても過言ではなかった。

 

未だ「兄弟」の域を脱しない僕たちは、それでも二人で助け合って生きてきた。

一日一日と、日々大人になっていく僕たちを取り囲む環境は、決して綺麗なものではなくて。

其処には賭引きや、強運、偶然など、実力やそれに伴う努力だけではどうにもならない事も多かった。

 

僕を見て?

目を逸らさないで?

貴方をこんなにも想っている…僕はいつも、側に居るから。

 

小さなお墓を前に、ただ黙って立ち尽くす兄に掛けてあげられる言葉はなくて。

ただ小さく啜り泣く声を聞いていた。

誰にもどうにも出来なかった。

貴方が責任を感じる必要なんてないのに。

僕がどんなにこの手で覆い隠しても、傷つきやすい兄の心は、絶えず涙を流す。

 

無理をして笑わないで?

強がって大人ぶらないで?

誰よりも傷つきやすいと…僕はそれを、分かっているから。

 

声を殺して泣く夜を、貴方は幾夜過ごしたのだろう?

僕に気付かれぬ様、きつく身体を抱き締める、その白い指先が痛々しい。

温もりはないけれど、生きているという感覚を与えてはあげられないけれど。

忘れないで、僕は生きている。

 

一人で抱え込まないで?

声を殺して泣かないで?

貴方の痛みが和らぐなら…いつだってこの場所は空けておくから。

 

堪えきれず抱き締めたか細い身体は、今にも壊れてしまいそうで。

小刻みに震える薄い肩に金糸の様な髪が流れ落ちた。

冷たい胸に頬を寄せる貴方がうっすらと微笑めば、僕も漸く笑顔になれる。

僕が守るから…貴方は僕が守るから…。

 

前を見て?

俯かないでいて?

僕はいつも側に居て、貴方の全てを守るから…。

貴方が救ってくれた魂で、貴方の全てを愛しているから。

 




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素敵なSSを有り難うございました〜♪
兄さん愛されまくりですねv(≧▽≦)

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